東海北陸理学療法学術大会誌
第28回東海北陸理学療法学術大会
セッションID: O-56
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一般口述
心臓血管外科術後の筋蛋白量の変化
*大川 晶未飯田 有輝伊藤 武久石田 智大河邨 誠
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抄録

【目的】 我々は、心臓血管外科術後の筋力や歩行能力の低下について手術後の炎症性サイトカインなどの指標を用いてその関連性の報告を行ってきた。筋力低下の要因は術侵襲による炎症での代謝亢進とそれに伴う筋蛋白分解、脂肪分解の促進によるものや手術後の精神的影響など様々な要因が影響していると考えられる。
 今回、心臓血管外科術後の筋力低下と体成分分析による筋肉量の変化を明らかにすることを目的に周術期において体成分測定を行ったので、その結果を若干の考察を踏まえて報告する。
【対象】 平成24年1月から5月までに待機的に心臓血管外科手術で開胸術を施行された症例のうち、手術前と手術後2週目に体成分分析の測定が行えた16名(男性13名・女性3名)、年齢68.0±8.3歳とした。
 主な疾患は狭心症10例、弁膜症4例、胸部大動脈瘤1例、心臓腫瘍1例であった。
【説明と同意】 本研究にあたり、当院倫理委員会の了承を得た。また本研究への参加に際して事前に研究の趣旨、内容および評価結果の取り扱い等に関して説明し同意を得た。
【方法】 体成分分析の測定にはBioelectrical Impedance Analysis法(INBODY3.0:Biospase社製)を用いた。測定、筋力の指標として握力を握力計(PRESTONE社製Jamar Hand Dynamometer)を用いた。それぞれ手術前・手術後2週目に測定した。
 統計学的処理には対応のあるT検定を用いて有意水準は5%未満とした。
【結果】 手術前と手術後2週目において握力、体成分分析の各項目において有意に低下が認められた。(p<0.05)(手術前握力28.8±9.5㎏、体重61.8±12.5㎏、筋肉量43.4±8.3㎏、脂肪量18.7±5.6㎏、体内水分量31.8±6.0㎏、手術後2週目握力24.8±10.6㎏、体重59.0±12.7㎏、筋肉量41.2±8.4㎏、脂肪量17.7±5.4㎏体内水分量30.2±6.1㎏)
【考察】 以前からの報告と同じく、今回の結果も手術前に比べ手術後の握力の低下が認められた。筋肉量の減少も認められたことから、筋肉量の減少は筋力低下の1つの要因として考えられる。
 さらに手術前に比べて手術後の体重、脂肪量も有意に減少していた。これらは手術侵襲による炎症で代謝が亢進しそれに伴う筋蛋白分解、脂肪分解の促進によるものと考える。
【まとめ】 心臓血管外科術後には筋力低下が生じており、それと同時に体重、筋肉量、脂肪量も有意に減少していた。
 筋力低下の1つの要因として筋肉量の減少が考えられるが、筋力には筋肉量以外にも様々な要因が影響していると考えられるため、今回測定した筋肉量以外の要因も否定できない。そのため今後は他の指標も含めさらに検討していく必要がある。

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© 2012 東海北陸理学療法学術大会
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