保健医療科学
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特集
多職種連携による地域歯科疾患予防対策
福田 英輝
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ジャーナル オープンアクセス

2020 年 69 巻 4 号 p. 378-387

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抄録

地域における歯科疾患予防対策,とくに歯科の二大疾患であるう蝕予防対策は,集団に対するフッ化物応用などの実践もあり,う蝕予防に対して一定の成果がみられている.しかしながら,乳幼児期・学童期のう蝕有病状況をみると,依然として都道府県間に格差が存在しており,社会経済要因や生活文化など個人を取り巻く社会環境に対するアプローチを含む新たなう蝕予防対策への転換が求められている.一方,歯周病,とくに成人期・高齢期における歯周病の有病状況は,一定した改善傾向がみられていない.地域を基盤とした有効な歯周病予防対策,いわゆるコミュニティ・ケアの展開が容易でないことを示している.地方自治体が健康増進事業として実施している歯周疾患検診の機会をとらえ,適切な個人衛生(セルフ・ケア),あるいはかかりつけ歯科医による歯周病治療・管理(プロフェッショナル・ケア)の確立を促す取り組みが必要である.あわせて歯周病は,糖尿病をはじめとする生活習慣病との関連が明らかにされている.歯周病予防対策を効果的にすすめるには,他の生活習慣病予防対策と緊密な連携を図りながらの展開が重要である.

本稿では,代表的な歯科疾患であるう蝕と歯周病について,地域住民におけるこれら疾患の有病状況を確認するとともに,課題解決に向けて他領域との連携の必要性について考察する.また,医学中央雑誌をもとに「歯科医学」と「多職種連携」との検索を行った結果,近年,顕著な増加傾向を示した「周術期口腔機能管理」について,著者らの研究を引用しながら,地域における病院とかかりつけ歯科医との連携,いわゆる病診連携の重要性を示したい.

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© 2020 国立保健医療科学院
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