原子力災害は社会に対して広範なリスク管理を求める事態をもたらす.このリスク管理において混乱も生じた.このうち飲料水の安全は生活の根幹を支えるものであり,明確な説明が求められる.そこで,飲料水中の放射性物質に関する国内外の指標について根拠となる考え方の整理を試みた.緊急時及び平常時について,国内の各種指標と国外の指標(国際機関,欧州連合,米国)について検討を行った.東日本大震災時に発生した原子力発電所事故後に日本で用いられた指標は,国際的な考え方に基づき導入された.それぞれの指標値は,その性格や前提が異なり,値だけを比較することは適切ではなく,それぞれの指標の根拠を踏まえることが重要である.