保健医療科学
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全国データに基づく薬物乱用分野における持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals :SDGs)に対する指標の提案
嶋根 卓也 猪浦 智史松本 俊彦
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ジャーナル オープンアクセス

2021 年 70 巻 3 号 p. 252-261

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抄録

目的:本研究では,日本国内で公表されている既存データベースをもとに薬物乱用領域(SGDs3.5)の指標案を検討することを目的とした.

方法:指標案を作成するために,研究目的に合致した情報が含まれている,調査が継続的に行われている,インターネットで情報が公開されていることを選択基準とし,次のデータベースを選択した.薬物使用に関する全国住民調査(2007~2019年),薬物乱用防止教室開催状況(2015~2018年),全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査(2012~2020年)精神保健福祉資料(2014~2017年).

結果:2019年に実施された全国調査によれば,一般住民における違法薬物の生涯経験率は,大麻(1.81%),覚醒剤(0.39%),有機溶剤(1.09%),MDMA(0.30%),コカイン(0.34%),ヘロイン(0.13%),危険ドラッグ(0.31%),LSD(0.30%)であった.大麻の生涯経験率は,2007年から2019年にかけて有意に増加した一方で,有機溶剤の生涯経験率は,2007年から2019年にかけて有意に減少した.薬物乱用防止教室の開催率は,小学校(78.6%),中学校(90.6%),高等学校(85.8%)であった.精神科医療施設を受診する薬物使用障害患者の主たる薬物の比率は,覚醒剤(36.0%),睡眠薬・抗不安薬(29.5%),一般用医薬品(15.7%),多剤(7.3%),大麻(5.3%),有機溶剤(2.7%),非オピオイド鎮痛薬(0.7%),オピオイド鎮痛薬(0.5%),危険ドラッグ(0.3%)であった.覚醒剤症例の比率が最も高い傾向が続く一方で,睡眠薬・抗不安薬および一般用医薬品の症例が増加した.薬物使用障害の精神病床での入院患者数は,2014年(1,689名),2015年(1,437名),2016年(1,431名),2017年(2,416名)であった.薬物依存症外来患者数(1回以上)は,2014年(6,636名),2015年(6,321名),2016年(6,458名),2017年(10,746名)であった.

結論:薬物乱用・依存領域におけるデータベースの蓄積性や継続性を踏まえ,1地域住民における違法薬物の生涯経験率,2学校における薬物乱用防止教室の実施率,3精神科医療施設における物質使用障害者の主たる薬物の構成比率,4薬物依存症の患者数および診療機関数を日本のSGDs3.5指標とすることが妥当と結論付けた.

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