2023 年 72 巻 1 号 p. 31-42
住民100人以上への給水または日量20m3以上の給水を行う水道施設を専用水道(SPOWs)という.専用水道や小規模水道の施設では適切な維持管理が必要であり,特に個人の飲料水用井戸を含む小規模水道では,健康被害を伴う水質事故が多く発生している.SPOWの水質事故の多くは,地下水を原水として使用している施設で発生しており,SPOWを設置する側には水質管理の徹底が求められている.最近の飲料水貯水槽の微生物汚染に関連する水質事故に加え,大学病院の建物で発生した事故について紹介する.2021年10月,大学病院の新生児集中治療室で,乳児17人のうち10人にメトヘモグロビン血症が発症した.これらの乳児は,大学病院の建物内の厨房で調製されたミルクを与えられていたことが判明した.最終的には,空調設備に使用されている防錆剤に含まれる亜硝酸塩が,クロスコネクションによりミルクを調製した水に混入したことが判明した.