理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: HO066
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呼吸器疾患
肺気腫患者における脚伸展筋力と歩行能力の関係
*林 奈央柳下 浩美高木 敏之関根 佳子高山 絵里長谷川 裕貴笠原 みどり櫻田 弘治間嶋 満牧田 茂坂本 芳雄
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抄録
[はじめに]肺気腫患者の多くは、運動時に呼吸困難が出現する為に運動の継続が困難になる。このため日常生活での活動量が減少し、筋力低下や歩行能力低下が生じるといわれている。今回、肺気腫患者の脚伸展筋力と、歩行能力について検討したので報告する。[対象]対象は2002年度に、当院で実施されている外来呼吸リハビリテーション(以下呼吸リハ)へ参加した、病状の安定している肺気腫患者8名(性別:男性8名、平均年齢:72±2.9才、H-J:II度8名、FEV1:0.99±0.4L、FEV1%:42.1±0.5%、HOT2名)である。[方法]脚伸展筋力の測定には、三菱電機(株)社製strength Ergo240を用いた。筋力測定モードを選択し、回転速度は30r/pmで左右各5回転ずつ施行し、各回転でのピークトルクを測定した。そのうちの最大値[Nm]を体重で除した値を対象の脚伸展筋力[Nm/kg]とした。両下肢の測定値を平均した値を採用した。歩行能力の指標には、最大努力性の6分間歩行距離(以下6MD)と1日あたりの歩数を用いた。6MDは、患者には6分間廊下をなるべく長く歩くように指示し、最大努力での歩行距離を測定した。1日あたりの平均歩数の測定には、スズケン(株)社製life corderを用いた。患者には、Life corderを5日間起床から就寝まで装着するよう指示した。1日あたりの平均歩数は5日間の歩数を平均したものを採用した。脚伸展筋力と歩行能力の関係はピアンソンの相関係数を用いて検定し、有意水準は5%とした。[結果]脚伸展筋力は1.85Nm/kg±0.08、6MDは410m±74.7m、1日あたりの平均歩数は5220.6±2287歩であった。脚伸展筋力と6MDの間に相関が認められた(R=0.766、P=0.024)。しかし、脚伸展筋力と1日あたりの平均歩数との間に相関を認めなかった。[結論]今回の結果から肺気腫患者の脚伸展筋力と関係するのは6MDで反映される最大努力での速く歩行する能力であった。しかし、脚伸展筋力は日常生活上で多く歩行する能力を反映する1日あたりの平均歩数との間に関係は認めなかった。以上から脚伸展筋力は速く歩行することには関係するが、日常生活上多く歩くということには関係していないことが明らかになった。肺気腫患者の脚伸展筋力を向上することは速く歩行する能力を改善する可能性はあるが、日常生活上で多く歩行する能力を改善するとは考えにくい。今後、日常生活で多く歩行する能力に関係する因子を明らかにし、それらに対する対策を講じることが、肺気腫患者の呼吸リハの課題と考えられる。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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