2023 年 72 巻 3 号 p. 191-202
日本における食中毒の発生状況は,この四半世紀の間,減少傾向が続いている.一方で,これまで食中毒事例として十分に認識されていなかったアニサキスによる事例は増加しており,これは患者を診断した医師が保健所に食中毒を届出る制度と関係していると考えられる.日本の食中毒の届出制度は,食中毒患者を診察した医師が保健所に届出ることによる受け身の監視制度のため,その事例が食中毒であると認識されないと届出がされず,統計上は食中毒と計上されず,その対策も進まないおそれがある.
アニサキス以外では,ヒスタミンも報告様式の病因物質のリストに含まれていないため,医療機関からの報告が過少になっている可能性がある.そのほか,非タンパク質分解性のボツリヌス菌は冷蔵での増殖と毒素産生の可能性があるが,食品包装の技術の向上・多様化により,魚介製品等の賞味期限が延ばされる傾向があり,それらの実情に合わせたリスク評価も必要であると思われる.
また,E型肝炎もこの10年で事例が増加しているが,食中毒として報告されるものは数件と少ないため,原因食品等の調査が十分実施されているか,また,発生を防止するための対策が十分に検討されているか懸念される.