本稿では,医療・介護レセプトを用いた政策研究の実践的な取り組みに焦点を当てることで,レセプトデータを実際的に政策で活用を検討する際に生じる課題を示すとともに,政策研究を進めるうえでの注意点等を明らかにする.具体的には,在宅医療・介護連携推進事業に関する政策研究を事例として示し,同事業におけるレセプトデータを用いた効果的な評価指標の開発を検討する中で,レセプト分析を実際に進めていくうえで直面する課題等について言及する.
事例となる政策研究では,在宅療養者の生活において,医療・介護の連携が求められる4場面(日常の療養支援,入退院支援,急変時の対応,看取り)に関する評価指標のさらなる活用を推進する観点から,各評価指標に関するデータが医療・介護突合レセプト(奈良県KDB)より抽出可能か,レセプト上の定義等を含めて検討した.また,各自治体では事業における定量的な現状把握として「地域包括ケア「見える化」システム」が最も多く活用されていることを鑑み,評価指標として使用するデータを見える化システムから取得する際に,どのような点に注意が必要となるかを併せて検討した.さらに,対象の県内において在宅医療・介護連携の先進自治体とされるA自治体を対象として,事業の取り組み状況をヒアリング調査した.
本研究事例の結果から,4場面ごとの多くの評価指標において,まずはレセプト上の定義付けを行う必要性が示唆された.見える化システムより取得できる訪問診療の算定回数等はレセプトデータ(NDB)からの抽出に基づいているが,その定義は公開されておらず,明確でない.レセプトから抽出される数値は,診療行為(コード)の定義により変わり得ることから,各自治体が独自に評価指標に関するデータをそれぞれが使用可能なKDBより抽出し活用する場合は注意を要する.特に,市区町村間の比較を行う際は,異なる定義によって抽出されたデータ同士を比較してしまう恐れがある.見える化システム内のレセプトから抽出されたデータの定義が,自治体によって確認可能となるよう整備が求められる.行政においてレセプトデータの活用がさらに推進されることにより,政策の方向性を判断する際のエビデンスの一つとして,その重要性が今後ますます高まる可能性があることから,行政によるレセプト活用の推進と政策研究をリンクさせることは今後一層重要になると考えられる.