2023 年 72 巻 5 号 p. 444-453
地域包括ケアシステムの構築に向けて,市町村では介護保険の保険者機能を発揮して,地域の実情を踏まえた体制づくりを行う必要がある.そのためには,都道府県が市町村に対し適切に支援を行う必要がある.
国立保健医療科学院では,2017年度より都道府県職員を対象とする介護保険における保険者機能強化をテーマとした研修を企画・運営してきており,2018年度より指定都市職員,そして2022年度研修よりは中核市職員にも受講対象を広げてきた.この研修のプログラムは,2016年度に実施された調査研究事業において示された内容をもとにしており,さらに受講対象者である都道府県・市町村の研修ニーズをヒアリング等で把握した上で,企画している.
本稿では,これまでの研修開催の実績や内容の変遷,そして研修の企画にむけ把握された都道府県・市町村の研修ニーズを振り返り,介護保険における保険者機能強化の推進に際して求められる自治体職員の体制や取り組みについて報告する.
上記の振り返りから,地域支援事業を担当する部署と介護保険事業計画の担当部署等の庁内連携体制,市町村と都道府県,その他関係機関の庁外連携体制が必要であることが示唆された.また,市町村は保険者機能の強化に向け,顔の見える関係づくりや訪問・ヒアリング等による定性的な情報収集によって事業を展開していたが,効果・効率的な事業実施に向け,事業の評価やデータを根拠にした優先順位設定などを実施していくことが求められていることが確認された.
今後の保険者機能強化の推進に向けては,第9期介護保険事業計画の指針にも定められているように,ロジックモデル等を活用して各種データと施策を結びつつPDCAサイクルを推進していくことや,これらの結果より効果的な地域支援策を検討していくことが自治体職員には求められるものと考えられる.