保健医療科学
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健康で快適な住宅の選択行動
本間 義規
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2024 年 73 巻 4 号 p. 305-314

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抄録

住宅の選択行動は複雑である.「健康性」,「快適性」が選択条件の上位になることは少なく,一方で,居住後に不満に思う割合は多い.2018年に示されたWHO housing and health guidelinesでは,過密居住の解消,過度の寒さを回避し18℃以上を確保すること,過度な暑さを解消すること,家庭内事故を防止すること,バリアフリーについて提言が行われている.こうした背景のもと,日本における住宅の選択行動を取り巻く状況を統計的データ,法制度,既往研究を参考にしながら,日本の住宅の選択実態について概観する.そして,健康で快適な住宅の選択行動に関し,「介入のはしご: The intervention ladder」を軸としながら日本とイギリスの住宅政策における介入状況について考察する.日本では,既に性能表示制度や建築物省エネルギー法などの整備,CASBEE健康チェックリスト等の開発が積極的に進められているものの,住宅の居住性能を評価・判定し,必要に応じて改修命令を出すことのできるイギリスの法制度と比較すると,日本の介入レベルは高くない.居住リテラシーの醸成やインセンティブを用いた誘導政策等が実施されているものの,健康やQOLの観点からも適切な住宅の選択行動をアシストできる何らかの仕組みが求められる.

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