保健医療科学
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特集
埼玉県内における熱中症対策の取組事例の紹介
埼玉県気候変動適応センターを中心に
大和 広明
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2025 年 74 巻 2 号 p. 103-111

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抄録

地球温暖化の影響で,埼玉県は夏季の高温と熱中症が多く発生している.2018年には全国最高気温41.1℃を記録した.また,猛暑日日数も近年連続で更新し,熱中症による救急搬送者数は全国上位を記録している.このような背景から,埼玉県気候変動適応センター(県適応センター)では,気候変動適応策の一環として熱中症対策の調査研究および普及啓発活動を推進している. 県適応センターは,気候変動に関する情報収集・整備・分析と,県内自治体や県民への情報提供という二つの主要な役割を担っている.また埼玉県独自の取り組みとして,県と市町村が共同で地域気候変動適応センターを設置し,2025年4月時点で17市町が参加している. 埼玉県の平野部では海風の影響により複雑な暑熱環境が形成され,特に東京都心の風下に位置する県中央部では午後まで高温が持続する特徴がある.こうした地域差を把握するため,県適応センターでは「IoT暑さ指数計」を開発し,県内多地点での暑さ指数をリアルタイムで計測・公開する取り組みを実施している.測定結果から,県北部では県南部よりも暑さ指数28℃以上の時間が長く続く傾向が確認された. 県内自治体の取り組みとしては,熊谷市のデジタルサイネージを活用した啓発や,深谷市のアグリテック企業との協働など,特徴的な事例がある.県適応センターは県の保健医療部と連携し,熱中症特別警戒情報発令時には情報発信を強化している. これらの取り組みの成果として,2024年は猛暑日が増加したにもかかわらず,熱中症による救急搬送者数が前年比で減少している点が注目される.今後も県適応センターは関係機関と連携しながら,効果的な熱中症対策を推進していく.

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© 2025 国立保健医療科学院

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