保健医療科学
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熱中症発生確率の回帰モデルによる熱中症発生の地域差に関する評価
下ノ薗 慧 竹田 飛鳥清野 薫子島﨑 大冨尾 淳
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2025 年 74 巻 2 号 p. 119-129

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抄録

【目的】本研究は熱中症救急搬送者数が増加する日最高外気湿球黒球温度(WBGT)を都道府県別に示すことを目的に,より精度の高い熱中症警戒情報の発出基準の策定に資するべく,その指標として熱中症発生確率(Px)を定義して熱中症発生の地域差・時期・年齢差を評価した. 【方法】Pxは日最高外気WBGTを1ºC単位で区分し,当該区分となる全日数に対して人口100万人あたりx人以上の熱中症救急搬送者が発生した日数の比率と定義した.便宜的にPxが50%となるときの日最高外気WBGT(Wx)が人口100万人あたりx人以上の熱中症救急搬送者が発生する閾値と考えることができる.2010~2023年における熱中症救急搬送者数と屋外のWBGT等のデータを用い,x=1, 2, 5, 10の4条件で月別・年齢別にPxを算出した.これらの結果を基に二項ロジスティック回帰分析により,3種類のPxの回帰モデル(全年齢・全期間モデル,全年齢・月別モデル,年齢別・月別モデル)を作成し,陰性的中率,陽性的中率,AUC(Area of Under the Curve)の指標で回帰モデルの妥当性を検証した.最終的に都道府県別にWxを算出し,熱中症発生の地域差を評価した. 【結果】東京都を対象として月別・年齢別にPxを算出し,それぞれ50%以上となるときの日最高外気WBGT を分析すると,9月,6~8月,5月の順,成人,少年,高齢者の順に高くなった.Pxの回帰モデルについては,月別・年齢別モデルではデータの不均衡により陽性的中率が0%となる場合があったものの,全年齢・全期間モデルと全年齢・月別モデルでは得られるWxは妥当性があるとされた.都道府県別のWxについては,比較的寒冷な地域ほどWxが低くなることが明らかとなった. 【結論】PxとWxを用いることで熱中症救急搬送者数が増加するときの日最高外気WBGTについて地域差ならびに時期を考慮できるとともに,高齢者に限れば年齢も考慮可能であることも示された.近年では自治体独自に屋外のWBGTを測定して自動的に警報を発出するシステムを構築している例もあり,本研究の成果はこのような自治体において警報発出基準を定める際に利用できる可能性がある.

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© 2025 国立保健医療科学院

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