脳神経外科と漢方
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症例報告
補中益気湯併用が奏効した硬膜外および硬膜下膿瘍の1例
北原 正和
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2016 年 2 巻 1 号 p. 53-58

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抄録

78歳の男性,右前頭部痛で受診した。MRIで右前頭部脳表に占拠性病変を認め,穿頭術で硬膜外および硬膜下膿瘍を確認した。細菌培養は陰性で,起炎菌は不明であった。手術後メロペネムを6週間静脈内投与し,その後ST合剤の経口投与に変更した。ST合剤投与6週間後にMRI所見の悪化,CRPの上昇を認め,膿瘍の再燃が疑われた。末梢血リンパ球数,予後判定栄養指数(PNI)の低下も認めたため,生体の免疫能の改善を目的に補中益気湯7.5g/日を追加した。その結果,4週間後にはMRI所見の改善,CRPの低下を認めた。ST合剤は16週間の投与で終了し,その後は補中益気湯のみ継続したが,再燃することなく経過している。

補中益気湯投与が本例の治療に有効であったことが強く示唆された。補中益気湯投与後リンパ球数,PNIの上昇傾向が認められ,免疫能の改善が推測される。

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© 2016 日本脳神経外科漢方医学会
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