脳神経外科と漢方
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Print ISSN : 2189-5562
2 巻, 1 号
脳神経外科と漢方
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
招待講演
教育講演
特別講演
総説
  • 中村 丈洋, 劉 亜南, 四宮 あや, 山本 融, 田宮 隆
    原稿種別: 総説
    2016 年 2 巻 1 号 p. 18-24
    発行日: 2016/09/30
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    抑肝散は2005年以降,認知症の周辺症状であるBPSD(behavioral and psycho­logical symptoms of dementia)に対して臨床で無作為比較対象試験が行われるようになり,これに伴い基礎研究も最近10年程で急激に進展し各病態モデルで解析が進められている。作用としてベンゾジアゼピン系,セロトニン系,グルタミン酸系,視床下部─下垂体─副腎系などへの関与が解明されつつある。本稿では抑肝散の行動異常に対する効果に焦点を置き,作用別そしてモデル別に分類し概説する。

原著
  • 長谷川 秀, 奥本 克己, 大田 和貴, 植田 裕, 伊東山 剛, 三浦 正毅
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 2 巻 1 号 p. 25-29
    発行日: 2016/09/30
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    外傷後の腫脹軽減に対し治打撲一方の有効性が報告されている。今回当院にて外傷後または術後腫脹患者に治打撲一方を投与しその有効性について検討した。53名のうち,転帰不明20名を除いた33名で,改善10名,悪化なし23名,悪化0名の結果を得た。処方した医師らのアンケートの結果では,13名中10名が腫脹の軽減効果を実感していた。治打撲一方は今後外傷・術後腫脹軽減に対する有効な治療薬となり得ることが示唆された。

  • 長尾 考晃, 福島 大輔, 上田 啓太, 長尾 建樹, 大石 仁志, 周郷 延雄
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 2 巻 1 号 p. 30-35
    発行日: 2016/09/30
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    慢性硬膜下血腫術後の再発予防のために柴苓湯を投与した症例について,その副作用を検討した。2009年4月から2014年10月までに3施設で手術を行った慢性硬膜下血腫561例を対象とした。柴苓湯の投与は72例で,そのうち5例(6.9%)に副作用が認められた。内訳は,間質性肺炎2例,肝機能障害1例,低カリウム血症1例,腓腹筋痙攣1例であった。柴苓湯を投与する際は,これらの副作用を念頭に置き,早期発見に努めるべきであろう。

  • 林 明宗
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 2 巻 1 号 p. 36-40
    発行日: 2016/09/30
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    【目的】 抗がん剤治療後の末梢神経障害に対する漢方治療の成績を報告した。

    【対象】 2014年4月から1年間に経験した化学療法後末梢神経障害104例(group 1),末梢神経障害予防目的で治療した25例(group 2)である。Group 1に対する治療評価は,改善度0~100%の上位1/4からexcellent,good,fair,no changeとした。Group 2では,治療終了時の神経障害の有無で評価した。

    【結果】 Group 1 : excellent 32例(30.8%),good 27例(26.0%),fair 10例(9.6%),no change 21例(20.1%),脱落14例(13.5%)。Group 2:残存障害無し14例(56.0%),有り8例(32.0%),脱落3例(12.0%)。

    【考察】 今回,障害された末梢神経の微小環境を改善し,末梢神経の自律的回復を促す目的で,牛車腎気丸に種々の方剤を併用し良好な成績を得た。

  • 山王 直子, 川嶋 朗, 石井 雄道, 松野 彰, 森田 明夫
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 2 巻 1 号 p. 41-46
    発行日: 2016/09/30
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    片頭痛患者に対する予防的治療としての漢方薬の治療効果を検討した。国際頭痛分類IIIβに基づき,片頭痛(前兆を伴う/伴わない/慢性片頭痛)と診断された1,094例のうち,410例に片頭痛予防の目的で当帰芍薬散96例(23.4%),呉茱萸湯72例(17.6%),五苓散90例(21.9%),葛根湯106例(25.9%),当帰四逆加呉茱萸生姜湯29例(7.1%),加味逍遙散29例(7.1%),半夏白朮天麻湯10例(2.4%),釣藤散10例(2.4%)を投与した。副作用・服薬困難などでの中断は全体で42例(10.2%)であった。3ヵ月以上継続した284例中,著効・有効例合わせた有効例は208例(73.2%),全投与患者の50.7%であった。女性の片頭痛患者において,漢方を使用した患者の約半数において有効性を認めた。片頭痛予防薬の数を減らし,頭痛発作の頻度減少効果が認められた。

  • 花 大洵, 新谷 祐貴, 竹信 敦充, 寺岡 暉
    原稿種別: 研究論文
    2016 年 2 巻 1 号 p. 47-52
    発行日: 2016/09/30
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    我々は補中益気湯による意識障害の改善作用を検討した。方法:Glasgow Coma Scale 8点以下が1週間以上続いた入院患者7例に対し補中益気湯を連日投与し種々の評価尺度で意識の改善を評価,統計学的解析を行った。結果:全例で補中益気湯開始後に著明な意識改善を認め,特に投与1週間以内で効果を認める症例が多かった(71~86%)。また,亜急性期~慢性期に投与を開始した症例の方が,急性期に投与を開始した症例より最終的な意識改善度が高い傾向があったが,統計学的な有意差はなかった。本研究は,渉猟し得た限り補中益気湯の意識改善作用を示唆した最初の報告である。

症例報告
  • 北原 正和
    原稿種別: 症例報告
    2016 年 2 巻 1 号 p. 53-58
    発行日: 2016/09/30
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    78歳の男性,右前頭部痛で受診した。MRIで右前頭部脳表に占拠性病変を認め,穿頭術で硬膜外および硬膜下膿瘍を確認した。細菌培養は陰性で,起炎菌は不明であった。手術後メロペネムを6週間静脈内投与し,その後ST合剤の経口投与に変更した。ST合剤投与6週間後にMRI所見の悪化,CRPの上昇を認め,膿瘍の再燃が疑われた。末梢血リンパ球数,予後判定栄養指数(PNI)の低下も認めたため,生体の免疫能の改善を目的に補中益気湯7.5g/日を追加した。その結果,4週間後にはMRI所見の改善,CRPの低下を認めた。ST合剤は16週間の投与で終了し,その後は補中益気湯のみ継続したが,再燃することなく経過している。

    補中益気湯投与が本例の治療に有効であったことが強く示唆された。補中益気湯投与後リンパ球数,PNIの上昇傾向が認められ,免疫能の改善が推測される。

  • 伊豆蔵 英明, 海老原 覚, 大国 生幸, 大島 力, 櫻井 貴敏, 岩渕 聡
    原稿種別: 症例報告
    2016 年 2 巻 1 号 p. 59-62
    発行日: 2016/09/30
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    Bell麻痺は比較的予後良好な疾患であるが,治療に難渋する症例も存在する。難渋例に対しては,顔面マッサージ・物理療法などのリハビリテーションを行うが,その他の有効な治療は確立されていない。今回,リハビリテーションに加えて桂枝茯苓丸を処方し,有効であった症例を経験したので報告する。駆瘀血剤としての作用が有効であったと考えられ,顔面神経麻痺難治例に対する治療の選択肢の一つとなる可能性がある。

  • 村岡 尚, 西川 明宏, 中村 裕一
    原稿種別: 症例報告
    2016 年 2 巻 1 号 p. 63-66
    発行日: 2016/09/30
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    脳血管障害において,血圧を下げずに脳還流圧を維持しながら除水治療が必要になることがある。今回,脳卒中で入院加療中に心不全や肺炎などを併発し,急性の肺水腫をきたした患者に対して五苓散を投与した。3症例とも血圧降下なく利水効果が得られ,肺水腫が改善した。肺水腫の急性期に対して五苓散が奏功したが,五苓散の投与量や投与期間には上限がなく,副作用に注意しながら慎重に投与する必要があると考えられた。

  • 蛯子 裕輔, 河野 能久, 山科 元滋, 石和田 宰弘, 原 祥子, 清水 一秀, 前原 健寿
    原稿種別: 症例報告
    2016 年 2 巻 1 号 p. 67-70
    発行日: 2016/09/30
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル フリー

    漢方医学では,血管の破綻による出血は瘀血の病態と認識できる。駆瘀血剤である桂枝茯苓丸 (TJ-25) 7.5 g/日,分3を脳出血急性期の9症例に投与し,血腫や浮腫の早期消退とそれに伴う神経症状の改善がみられた2症例を経験した。本報告では症例数が少なく有効性の検討はできていないため,今後症例の蓄積と適正な評価方法の検討が必要である。

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