2017 年 3 巻 1 号 p. 11-16
慢性硬膜下血腫(chronic subdural hematoma; CSH)に対して,五苓散や柴苓湯などの漢方薬が薬物療法として投与され,その効果が多く報告されているが,実臨床の現場での実態は不明である。そこで,熊本大学脳神経外科同門の医師らにアンケート調査を行い,CSHに対する内科的治療について検討した。主にCSHを治療している脳神経外科医の58%が五苓散を,17%が柴苓湯をCSHに対する薬物治療の第一選択薬として投与していた。効果はほぼ同等と考えられていたが,両剤とも効果の実感はあまり高くなかった。難治性CSHに対しては柴苓湯の使用が増えていた。
脳神経外科医の75%がCSHに対する薬物治療において漢方薬を第一選択薬として使用しており,漢方薬がCSHに対する薬物治療の主流となっていた。五苓散と柴苓湯の効果はほぼ同等と考えられているが,柴苓湯には重篤な副作用が出現する可能性があるため,CSHに対する第一選択薬としては五苓散が推奨されていると考えられた。