2019 年 5 巻 1 号 p. 38-42
重症患者において,高度侵襲に伴う臓器障害の一分症として消化管機能が低下する。重症くも膜下出血を発症した症例で集中治療室での胃液排液量増加症例に対し,胃蠕動改善および胃内容排出促進作用を有する六君子湯の投与を行った3症例について検討した。3症例ともに六君子湯投与を行うと胃内容逆流による胃管排液は減少もしくは消退し,経管栄養の開始や増量は可能であった。重症くも膜下出血の場合には,交感神経緊張に伴う臓器障害が知られている。その中で,交感神経の腸管抑制反射による胃内容停滞や腸管運動障害がある場合には,嘔吐や誤嚥の危険性を考慮した上で対応を要する。本3症例のような高ストレス状態にある胃内容逆流を呈した時には六君子湯は有用であった。