抄録
音声合成をより使いやすくかつ表現力豊かにするために,我々は階層型音声合成記述言語 MSCL を開発した.MSCL は記述という方法によりニュアンスや心情,感情などを合成音声に付加することが可能である.MSCL は S 層,I 層,P 層の 3 つの階層を有し,初学者から音声学的知識を有する者まで対応可能にする.一方,MSCL の S 層が提供する新たなコマンドの作成手法そして I 層に備わる韻律制御コマンドによって生じる聴感上の効果(印象)の検討は MSCL における課題となっていた.そこで,本研究は MSCL の課題である韻律制御と印象の関係について実験を通じて見出した,8 つの制御規則を提案し,それぞれの主な印象について連想法を通じて分析した.また,制御規則を組み合わせて得られる印象の変化についても分析を行った.さらに,韻律制御コマンドを利用する上での留意点について言及する.音声合成での韻律制御を行うための 1 つのアプローチを提案する.