抄録
本論文では, 意味解析を主とする自然言語処理システムにおける語の意味の曖昧性解消の処理の効率化を場面に基づく文脈情報を利用して実現する方法を提案する. 現在における文脈依存の意味処理では文脈の定義方法と知識の獲得方法が問題とされる. また実装時には意味選択の組合せ爆発による計算量の大きさが問題となる.文脈情報により一部の語に対してでも語義の優先順位づけが有意に行なわれれば, 共起関係などを用いて他の語の多義性や構文解析の解空問を早く絞り込むことができる. 本論文では, 談話内の言語外知識である場面情報を空間的連想による文脈情報と位置付け, 画像理解による知識獲得の近似として視覚辞書を利用し, 実際の物語文を対象にし評価した結果を示す. 場面に関連する各英語名詞に対し独立に平均1.5倍以上の処理速度向上が得られている. また多義性解消率は全く情報がない場合の51%に比べ本手法では83%まで上昇する. あわせて場面情報の知識表現の違いによる効果の違いについての考察, 手法の限界点, およびシステムに加えて必要とされる場面解析機構についての考察を述べる.