イノベーションという概念をシュムペーターまで戻って再考する.それは資本主義経済における利潤と経済成長を生み出す構造の再考でもある.イノベーションによって利潤を生み出すためには,新知識(科学技術的知識にかぎらない)と,その市場化が必要だ.
20世紀初頭までの米国では,個人発明家が新知識を生み出し,その市場化を大企業が担う例が多かった.1930年代から1960年代にかけて,新知識獲得と市場化が,同一企業内で行われるようになる(リニア・モデルと中央研究所の時代).1970年代以後は,大学が生み出した知識を,大学発ベンチャーが市場化する活動が活発になる.
第2次大戦後の日本は,外国で確立した技術の導入から始めた.1960年ごろからは日本も中央研究所の時代となる.1990年前後のバブル経済の時期,企業が基礎研究を強化する.しかしすぐに経済が低迷し,企業は研究開発活動を弱める.これに応ずる形で日本でも,イノベーションへの大学の貢献が期待されるようになる.しかし日本のイノベーション政策は,あまりに研究指向かつ社会主義的で,経済活性化に貢献しているとは言えない.