科学技術社会論研究
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Print ISSN : 1347-5843
短報
私はテラスにいます
責任ある研究・イノベーションの実践における憂慮と希望
吉澤 剛
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2017 年 14 巻 p. 116-133

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抄録

 日本における責任ある研究・イノベーション(RRI)の実践について,研究やイノベーションのプロセスにおける多様性や包摂,公開性,透明性を重視するオープンアクセスや男女平等,市民関与といった取り組みは比較的見えやすいものの,専門家と市民との非対称的関係性や,過剰包摂による反動のおそれは見えにくい.倫理や科学教育ではアクターの認識や行動における応答性や適応的変化を促すために,自律的な規範形成や模倣戦略が必要となる.研究とイノベーション,教育,地域貢献との接続や,そのための人材育成や制度設計,コミュニティ構築を展望するような先見的で省察的なガバナンスによって,公共圏におけるRRIの実践そのものも,新たな組織や社会像とともに位置づけ直していかなければならない.

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© 2017 科学技術社会論学会
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