科学技術社会論研究
Online ISSN : 2433-7439
Print ISSN : 1347-5843
短報
デュアルユース研究とRRI
現代日本における概念整理の試み
川本 思心
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2017 年 14 巻 p. 134-157

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抄録

 2015年からデュアルユース研究のための「安全保障技術研究推進制度」が開始された.防衛装備庁によるこの制度は,日本の科学技術政策の一つの転換点であり,大学の研究環境に多大な影響を与えると懸念されている.そしてデュアルユース研究とは何か,大学はどう対応すべきかが議論されている.本稿では米国におけるデュアルユース概念の成立と変化を踏まえたうえで,2000年代以降の日本における「デュアルユース」概念の内容分析を行った.学術セクターは2011年頃から新しいデュアルユース概念である「用途両義性」に注目してきた.一方,2005年頃から「軍民両用性」が「安全・安心科学技術」の文脈の中で発展してきた.二つの概念は統合されず,別々に論じられている.以上のような日本における「デュアルユース」議論の問題点をRRI(Responsible Research and Innovation:責任ある研究・イノベーション)の枠組みを用いてさらに検討した.現在の議論は,軍民両用性・用途両義性のいずれについても不十分であり,今後起こりうる問題に応答的であるとは言い難い.

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