科学技術社会論研究
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高校生のジェンダーステレオタイプと理系への進路希望
井上 敦一方井 祐子南崎 梓加納 圭マッカイ ユアン横山 広美
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2021 年 19 巻 p. 64-78

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抄録

 本稿では,ジェンダーステレオタイプと理系への進路希望との関係を調べ,ジェンダーステレオタイプが理系選択の障壁になっているのかを考察した.2012 年に実施された「高校生と母親調査」のデータを用いて分析したところ,「男は外で働き,女は家庭を守るべきである」という性別役割分業に関するジェンダーステレオタイプを肯定した女子生徒に比べて,肯定も否定もしなかった女子生徒および否定した女子生徒は,理系を希望する確率が高く,統計的に意味のある差が確認された.一方で,「男性の方が数学や専門的な技術を使う能力が高い」という能力に関するジェンダーステレオタイプは,男女ともに,理系への進路希望とは統計的に意味のある関係は確認されなかった.また,理系科目の成績,親の学歴や世帯年収といった家庭環境も,理系への進路希望と統計的に意味のある関係を持っていることが確認された.性別役割分業をはじめとする社会全体に未だ根強い男女不平等観を解消することは,女子生徒の理系分野への進路選択の障壁を取り除くことにも大きく貢献するものと考えられる.

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