2022 年 20 巻 p. 34-40
本稿では,2021年5月8日に開催された科学技術社会論学会シンポジウム「新型コロナ・自然災害・原発事故についていかに分かり合うのか―コミュニケーションを再考する」での議論を整理し,突発的かつ大規模な災害による危機的状況(クライシス状況)でのコミュニケーションのあり方について検討をすることを目的とする.第一に,予言の自己破壊という観点からクライシス状況におけるコミュニケーションの本質的な困難を述べた.続いて,シンポジウムで発表された新型コロナ(奈良報告),自然災害(関谷報告),原発事故(寿楽報告)の報告をもとに災害におけるコミュニケーションの課題を整理した.最後に,あらためて三領域に共通する課題を取り出し,コミュニケーションのあり方とコミュニケーションの位置づけを振り返った.