2024 年 22 巻 p. 51-63
生殖技術の発展は地域間の経済格差や制度上の差異と相俟ってグローバルな生殖市場を生み,今や不妊のカップルや個人,あるいは配偶子提供者や代理母は,生殖技術を利用/提供するために国境を越える.現代の欧州においてこの「国境を越えたリプロダクティブ・サービス(cross-border reproductive services: CBRS)」の拠点の一つとなっているのが,チェコ共和国である.
本研究は,なぜチェコがCBRSの受入国となるのかという問いに関して,(1)生殖技術の規制枠組み,(2)医学的アクセシビリティ,(3)生殖サービスの価格という3 つの分析視角から制度的要因の検討を行う.結論として,(1)生殖技術に関する規制の緩さ,(2)医学的アクセシビリティの高さ,(3)生殖サービスの価格のクライアントにとっての安さおよび代理母にとっての報酬の高さといった要因が絡み合い,西欧からはクライアントが,東欧からは代理母が生殖サービスの利用/提供のためにチェコを訪れると示される.