科学技術社会論研究
Online ISSN : 2433-7439
Print ISSN : 1347-5843
原著
「脳神経関連権」再考
先端的脳神経科学のELSIをいかに論じるべきか
石田 柊標葉 隆馬
著者情報
ジャーナル フリー

2024 年 22 巻 p. 82-100

詳細
抄録

 脳神経科学とその応用技術の発展に伴い,欧州を中心として,ヒトの脳活動を保護するための新しい人権理解として脳神経関連権(neurorights)という枠組みが注目されている.他方で,この枠組みの人権理解としての新しさには論争がある.本論文では,この新語をとりまく論争を概観したのち,この概念の意義について二つのことを論じる.第一に,脳神経関連権という考え方の前提には,「脳への介入により人格が変わる」など,経験的に確立されているとはいえない懸念も含まれる.これを喫緊の課題として論じるのは不適切かもしれないが,予見的議論として論じることはRRIの観点から求められる.第二に,脳神経関連権は,脳神経倫理学の研究蓄積にもとづいているとはいえ,その内容は既存の人権理解の拡張であり,理論的に平凡ですらある.しかし,脳神経科学の急速な進展とガイドラインの不在から先端的脳神経科学のELSIやRRIの議論への関心が高まっている現状に鑑みて,議論枠組みの平凡さはかえって合意のしやすさという点で美点であり,さらなる議論を促す上で有用である.

著者関連情報
© 2024 科学技術社会論学会
前の記事 次の記事
feedback
Top