抄録
哺乳類一次視覚野には,視覚特徴量に関するコラム構造が存在することはよく知られている.ニューロンの受容野プロファイルの対称性から説き起こして,視覚野におけるこうした情報表現の構造をトポロジーの観点から分析する.ネコやフェレットの視覚野における内因性信号の光計測によって,方位表現の特異点(pinwheel centers)と最適運動方向が反転する不連続線の存在が報告されているが,まず,そのトポロジカルな性質を明らかにする.次に,深さ方向の次元を考慮したときの3次元視覚野における方位・方向表現とその特異性を導く.これによって,視覚野情報表現は,従来から提唱されているアイスキューブモデルのようなリジッドな構造ではなく,溝や回を持つ大脳皮質の形状に合わせた柔軟な機能的構造であること示す.