日本神経回路学会誌
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神経発達障害の説明のギャップに対する神経ロボティクスアプローチ
出井 勇人
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2022 年 29 巻 2 号 p. 41-51

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抄録

神経発達障害の神経レベルと認知行動レベルの特性について,観察に基づいた生物学的知見が蓄積されているが,これらの間には説明のギャップが存在する.計算論的精神医学では,脳の計算モデルを使用することでこの課題にアプローチし,症状形成メカニズムの統合的な理解を試みている.特に予測情報処理理論に基づいた計算モデルの枠組みでは,感覚刺激あるいはその原因(環境)に関する情報精度(不確実性)の推定異常が,自閉スペクトラム症を含む神経発達障害と関与していることが示唆されている.しかし,症状形成における学習発達の側面や身体性(脳–身体–実環境の動的相互作用)についてはおおよそ考慮されておらず,抽象的な議論にとどまってきた.本稿では,階層的な予測情報処理を行う再帰型神経回路モデルを用いた神経ロボティクスの枠組みで,神経発達障害の神経レベル,計算レベル,認知行動レベルの,学習発達を考慮した形での橋渡しを試みた一連の研究を紹介する.また,それらの研究知見に基づき,神経発達障害のequifinal性と多様性について考察する.

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© 2022 日本神経回路学会
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