日本神経回路学会誌
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解説
ラットの警報フェロモンと安寧フェロモン
清川 泰志
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2024 年 31 巻 2 号 p. 55-62

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抄録

本稿では,ラットがフェロモンを介して不安や安心といった情動を伝えるコミュニケーションの概要を紹介する.ストレッサーに曝されたラットが肛門周囲部より放出する4–メチルペンタナールとヘキサナールの混合物が警報フェロモンとして機能する.4–メチルペンタナールは鋤鼻系で,ヘキサナールは主嗅覚系でそれぞれ受容された後に扁桃体内側核後腹側へと伝達され,そこで情報が統合された後に分界条床核へと伝達される.その結果,分界条床核を活性化し,フェロモンを嗅いだラットに様々な不安反応を引き起こす.一方,自分と同じ集団に由来する,自分が好む系統のラットが頸部から放出する2–メチル酪酸が安寧フェロモンとして機能する.2–メチル酪酸は主嗅覚系で受容された後,前嗅核後部,外側扁桃体核間細胞塊,扁桃体外側核へと伝達されていき,扁桃体外側核を抑制する.その結果,安寧フェロモンを嗅いだラットの恐怖反応を緩和する.不安や安寧など,動物の生存に根源的に関わる脳活動は哺乳類に共通していることから,ラットにおいて情動コミュニケーションを解析していくことは,哺乳類の自然な行動を理解するための良い手段であると考えている.

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