2024 年 31 巻 2 号 p. 63-70
ヒトとヒトのコミュニケーションには無意識的な他者との行動リズムの同期が見られ,他者とのコミュニケーションの成立において重要な役割を担う.このような他者との同期をはじめとした社会性に関係する認知脳科学研究では,複数名の脳活動を同時に計測し,別個体の脳活動間の関係を分析するハイパースキャニングと呼ばれるアプローチが増えている.本稿はコミュニケーションにおける二者間の行動リズムの同期に伴って二者の脳波リズム間の同期(脳間同期)を示したハイパースキャニング研究を紹介し,この脳間同期が何を反映しているのか,コミュニケーションにどのように影響するのか,を知覚運動連関の観点で解説する.さらに,コミュニケーションと脳間同期の因果関係などの脳間同期の解釈の問題点とともに,将来の社会応用への期待などを議論する.