本稿では,機械学習における生成モデルの新たな潮流である拡散モデルと物理学の概念との接点について論じる.拡散モデルは画像・音声・動画生成において顕著な成果を上げており,その仕組みを紐解くと物理学の考え方と自然につながる点が多い.まず,拡散モデルの基本となる順過程・逆過程とLangevin方程式の関連について述べ,次に量子力学の経路積分を応用した拡散モデルの新たな定式化について紹介する.この定式化では,確率的・決定論的サンプリング間を補間するパラメータが量子力学のPlanck定数に似た役割を果たす.また,この経路積分表示に基づいてWKB近似を応用し,異なるサンプリング手法の性能差を解析した研究についても述べる.物理学の視点から拡散モデルを捉え直すことで,そのダイナミクスの本質への理解が深まり,新たな洞察が広がることが期待される.