海馬と嗅内皮質は脳内の地図(認知地図)としての役割を担う脳部位として知られており,場所細胞やグリッド細胞のような空間に関する情報表現が存在する.本解説では,これらの空間表現に関する近年の実験的知見とモデル化の研究動向を概説し,空間表現と共通の枠組みでテキストデータから単語の意味表現が構築できることを示したモデルDisentangled Successor Information(DSI)を紹介する.このモデルにより,脳における認知地図表現の仕組みを言語のような複雑な意味や概念の表現へ拡張できる可能性について解説する.