看護理工学会誌
Online ISSN : 2432-6283
Print ISSN : 2188-4323
ISSN-L : 2188-4323
原著
頸部の姿勢の違いが口腔期・咽頭期の嚥下動態に及ぼす影響
髙橋 遼窪田 聡古舘 卓也遠藤 豊
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2023 年 11 巻 p. 1-9

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抄録
 本研究は,頸部の姿勢の違いが口腔期と咽頭期の嚥下動態に及ぼす影響を,臨床応用が可能な非侵襲的方法を用いて明らかにすることを目的とした.健常若年者22名を対象に,頸部中間位,屈曲位,左右の側屈位の4通りの姿勢について嚥下動態を計測した.8mL の常温水を嚥下し,舌骨上筋群と口輪筋の筋活動を表面筋電図で記録した.口腔期に要した時間や咽頭期の指標となる潜時,舌骨上筋群の活動電位,嚥下困難感を抽出した.結果より,屈曲位は咽頭期に嚥下関連筋の活動を小さく抑えられる一方で,口腔期には,水を咽頭へ送り込むことに時間を要することが示唆された.また,口腔期の指標として,筋電図を用い,口輪筋の活動開始から舌骨上筋群の活動開始までの時間を分析することの有用性が示唆された.

【キーメッセージ】
1.今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
 研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
→摂食嚥下場面において,姿勢が修正されないまま,食事をしている場面に遭遇することがあり,頸部姿勢の崩れが嚥下動態に与える影響をテーマとした.

2.この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
→ 医療機関以外の環境下でも,非侵襲的な方法を用いて,口腔期・咽頭期の定量的な評価・計測が行えること.

3.今後どのような技術が必要になるのか?
→舌骨上筋群以外の嚥下関連筋の計測方法を検討する技術が必要である.また,水以外の異なる物性での嚥下や連続した嚥下における評価の妥当性の検討が必要である.
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