看護理工学会誌
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原著
機械学習を用いた時計描画テストの描画特徴に基づく 認知機能重症度スクリーニング
増尾 明伊藤 有生金岩 司内藤 光祐佐久間 拓人加藤 昇平
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2023 年 11 巻 p. 10-19

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抄録
 世界的に認知症患者数は増加しており,認知機能評価の効率化が求められている.本研究は,時計描画テストに機械学習を適用し,認知機能重症度のスクリーニング性能を調査した.77名の高齢者を対象に,認知症群(COG),軽度認知障害群(MCI),健常群(HC)に割り付けた.時計描画テストに対して,14種の項目を異常の有無で数量化し,特徴を抽出した.サポートベクターマシンを用いてペアワイズ法で判別モデルを構築した.また,ランダムフォレストの特徴重要度を指標に,判別に寄与する描画特徴を調査した.判別性能は,COG 対MCIが70%,COG対HC が76%,MCI対HC が56%であった.また,COG 対MCI,COG 対HC の判別には,針の誤配置,長短針の逆転,数字の空間配置の欠如を含む5種または3種の描画特徴が寄与していた.これらの描画特徴は効率的な認知症の一次スクリーニングに貢献する可能性が示唆された.

【キーメッセージ】
1.今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
 研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
→認知症の臨床評価に使用される時計描画テストに機械学習を適用することで,認知症スクリーニングのプロセスを定量化することをテーマとしている.

2.この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
→ 認知症重症度の判別に有用な描画特徴の知見を提供し,医療従事者による認知症スクリーニングの効率化への貢献が期待できる.

3.今後どのような技術が必要になるのか?
→多くの描画特徴をもつデータを使用して判別モデルを構築し,特に軽度認知障害群と健常群の判別性能の高精度化を目指す必要がある.
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