抄録
目的:ラットを用いた基礎研究により,ドブタミン塩酸塩が血管外に漏出した際にα1作用の活性化を予防するためのα遮断薬の局所注射について,その影響を予備的に検討することである.方法:ラットの背部皮下にドブタミン塩酸塩の実験的な漏出性皮膚傷害を作製し,α遮断薬の局所注射を行う処置群,そして処置を実施しない無処置群に分けて3日間肉眼的観察を行った.結果:α遮断薬を局所注射した処置群では,実験後1日目に6/10ヵ所が漏出部位の皮膚に黒色調の変化が認められた.そして,徐々に皮膚傷害は悪化し,3日目までに6ヵ所すべてが潰瘍を形成した.その一方で,無処置群も実験後1日目に6/10ヵ所が漏出部位の皮膚に黒色調の変化が認められ,徐々に皮膚傷害は悪化し,3日目までに6ヵ所すべてが潰瘍を形成した.結論:これまでドブタミン塩酸塩の血管外漏出時はα1作用の活性化を予防するための処置が推奨されてきたが,本実験ではα遮断薬の局所注射を実施した処置群は処置を行わない無処置群の潰瘍を形成した部位数に変わりはなかった.
【キーメッセージ】
1.今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
→α1作用の弱いドブタミン塩酸塩が漏出した際に,その作用の活性化を予防する処置が有効であるかは不明であるため検討する必要がある.
2.この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
→ ドブタミン塩酸塩の漏出性皮膚傷害に対するエビデンスに基づく確かなケアの確立に向けた基礎資料となることが期待できる.
3.今後どのような技術が必要になるのか?
→当該製剤が漏出した際の化学的な刺激に関する影響と皮膚傷害の組織評価についてさらなる検討が必要である.