看護理工学会誌
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実践報告
看護学生のエコー使用が解剖生理学の学習意欲に与える効果: パイロット試験
望月 麻紀鈴木 美穂
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2024 年 12 巻 p. 22-26

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抄録
 看護学生にとって解剖生理学は暗記が多い科目で,その学習は,授業単位の取得や国家試験合格といった他律的な動機付けにとどまりやすい.本研究では, 超音波検査装置(エコー)で生体内部を描出する体験が,学生の自律的な学習意欲に与える影響を検討するパイロット試験を実施した.大学2年生の研究参加者11 名のうち,介入群6名にエコー使用体験講習を行い,対照群5名には何も行わず,講習前と講習1ヵ月後に大学生用「自ら学ぶ意欲」測定尺度で自律的な学習意欲を測定した.研究参加者は自律的な学習意欲が高く,天井効果が認められ,両群に統計学的に有意な変化はなかったが,介入群の自ら学ぶ意欲は対照群にくらべて高く維持される傾向にあった.介入群に講習直後に実施したアンケートでは,参加した6名中,6名が「知的好奇心が満足した」,5名が「有能感が増した」と回答し,解剖生理学の学習への高い関心を示した.エコーを用いた教育の自律的な学習意欲への影響はさらなる研究が必要である.

【キーメッセージ】
1.今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
 研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
→看護学生の解剖生理学の学習は,看護実践において必要性を自覚し,能動的に習得しようとする自律的動機ではなく,定期試験や国家試験といった他律的動機による一時的なものになりやすく,学生のうちから自律的動機を強化できるとよいと考えました.筆者は在学時にエコーのハンズオン講習で生体内部を観察し,解剖生理学の学習意欲が高まりました.

2.この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
→ 看護師養成課程におけるエコーの教育効果の新たな可能性を検討しました.エコーを用いる教育と用いない従来の教育の1ヵ月後の効果を,自ら学ぶ意欲と解剖生理学の学習姿勢の自己評価により,無作為化比較試験でくらべる方法を提示しました.

3.今後どのような技術が必要になるのか?
→看護学生の自律的な学習意欲を測定する適切な尺度を検討するとともに,看護師養成課程にエコーを導入しやすいよう,操作性がよく,安価な機器の開発が必要と考えます.
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