抄録
非侵襲的な皮膚評価法であるスキンブロッティングの臨床応用に向けた液相化法が提案されているが,処理の長さ(1時間)と界面活性剤濃度の高さ(1%)が臨床応用上の問題である.本研究では,液相化法の時間と界面活性剤濃度の最適化を目的とした.液相化時間(1時間,5秒)と界面活性剤濃度(1%,0.3%,0.2%,0.1%)それぞれの条件で,5種類のタンパク質の回収量を比較した.その結果,時間による有意差は認められなかった.界面活性剤1%と比較して0.3%と0.2%では有意差は認められなかったが,オボアルブミンの修飾変化が示唆された.一方,0.1%ではウレアーゼとオボアルブミンが有意に低下したが(おのおのP<0.01,P=0.024),オボアルブミンの変化は微小であった.このことから,液相化には5秒で十分であり,タンパク質の修飾変化防止には0.1%,回収量重視の場合は0.2%の界面活性剤が最適であると考えられた.
【キーメッセージ】
1.今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
→寝たきりなどで皮膚が体重により圧迫され,血流障害が起こると褥瘡が生じる.初期は発赤にとどまるが,悪化すると開放創となり,患者の不快感や疼痛,創感染による治癒遅延などの問題を引き起こすので,開放創に悪化する発赤を予測できないかと考えた.
2.この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
→ 本研究成果を応用することで将来,褥瘡がまだ発赤段階のうちに,その悪化リスクをベッドサイドで迅速かつ簡便に評価できるようになり,ひいては褥瘡悪化予防のための最適なケア選択が可能となることが期待される.
3.今後どのような技術が必要になるのか?
→イムノクロマトやナノフォトニクスなどを用いた,サンプル中に含まれるタンパク質の短時間同定・定量法の開発や,前処理から分析,ケアリコメンデーションまでを自動で行える小型装置の開発が必要となる.