抄録
はじめに:ヒトの生体が決定論的カオスであることが多くの研究によって示されているが,ヒトの胎児と母では明らかになっていない.方法:4人の母とその胎児を対象に妊娠11週から36週まで,超音波ドップラー法で母児の心音を同時測定し,カオス解析を行った.Random shuffle,Fourier shuffle Period-shuffleのサロゲートを行い,母児のデータのランダム性を検証した.最大リアプノフ指数(λ1)の計算,アトラクターの抽出を行った.結果:相関次元は5次元であった.3種のサロゲート法すべてにおいて母児データのランダム性が棄却された.母児のλ1は正であり,両者のアトラクターが抽出できた.これらのことから胎児と母は決定論的カオスであることが示された.考察:本結果は妊娠初期から後期にわたって胎児と母が決定論的カオスであり,非線形相互作用する自己組織化能力を備えていることを明らかにした.