抄録
地質媒体中における放射性核種の吸着 ・ 移行挙動に及ぼす腐植物質の影響を明らかにするため、フミン酸を共存する条件下において、海岸砂を対象とした85Sr のバッチ法吸着実験およびカラム法移行実験を実施した。
フミン酸を共存する液相中においては、砂への吸着親和性が小さな85Sr-フミン酸結合体が形成された。しかしながら、その結合カは85Sr と砂との吸着親和性に比較して著しく小さいため、バッチ法吸着実験で測定した85Sr の分配係数はフミン酸共存の影響を受けなかった。一方、カラム法移行実験では、フミン酸結合体の解離過程が平衡に達しないので、一部の85Sr-フミン酸結合体が砂層深部へ移行することにより、85Sr の移行の増大がみられた。フミン酸共存下における85Sr の砂層中移行挙動は、85Sr-フミン酸結合体の解離速度を考慮した吸着 ・ 移行モデルを用いて評価できることが示された。