原子力バックエンド研究
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1 巻, 2 号
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論文
  • 菅野 卓治
    1995 年 1 巻 2 号 p. 131-162
    発行日: 1995/05/01
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
      高レベル廃棄物の地層処分における安全評価を行う場合には、固化体から浸出する放射性核種が移行媒体である 地下水中でどのような化学種として存在し、どのような移行挙動をとるかを十分に知っておくことが重要である。そのためには、地下水中に存在する有機物であるフミン物質がどのような性質を持ち、どのような錯体を作るかを充分に調査し、それが核種移行にどのように関与するかを充分把握しておくことがきわめて重要である。このレビューではフミン物質の性質、構造や金属イオンとの錯生成に関与する官能基やその反応などについて調査し、現在どの程度のデータが知られているかをまとめ、その際きわめて重要であるフミン物質の濃度評価についても簡単に触れてみる。
  • 長崎 晋也, 田中 知, 鈴木 篤之
    1995 年 1 巻 2 号 p. 163-168
    発行日: 1995/05/01
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
      石英表面に付着させたカオリナイト粒子の脱離に及ぼす溶離液の pH とイオン強度の影響を、カラム法により測定した。pH 条件によらず、イオン強度が小さい場合にカオリナイト粒子の脱離が観測され、それ以上のイオン強度ではカオリナイト脱離が発生しないという臨界イオン強度が存在することがわかった。石英とカオリナイト粒子の実測あるいは推定した表面電位を用いて計算した電気 2 重層ポテンシャルとファンデルワールスポテンシャルから、石英とカオリナイト粒子の間に作用する全相互作用ポテンシャルを計算した。その結果、実測した臨界イオン強度は全相互作用ポテンシャルのバリアから予測した臨界イオン強度と比較的一致することがわかった。
  • 田中 忠夫, 向井 雅之, 妹尾 宗明
    1995 年 1 巻 2 号 p. 169-176
    発行日: 1995/05/01
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
      地質媒体中における放射性核種の吸着 ・ 移行挙動に及ぼす腐植物質の影響を明らかにするため、フミン酸を共存する条件下において、海岸砂を対象とした85Sr のバッチ法吸着実験およびカラム法移行実験を実施した。
      フミン酸を共存する液相中においては、砂への吸着親和性が小さな85Sr-フミン酸結合体が形成された。しかしながら、その結合カは85Sr と砂との吸着親和性に比較して著しく小さいため、バッチ法吸着実験で測定した85Sr の分配係数はフミン酸共存の影響を受けなかった。一方、カラム法移行実験では、フミン酸結合体の解離過程が平衡に達しないので、一部の85Sr-フミン酸結合体が砂層深部へ移行することにより、85Sr の移行の増大がみられた。フミン酸共存下における85Sr の砂層中移行挙動は、85Sr-フミン酸結合体の解離速度を考慮した吸着 ・ 移行モデルを用いて評価できることが示された。
  • 黒澤 進, 吉川 英樹, 油井 三和
    1995 年 1 巻 2 号 p. 177-185
    発行日: 1995/05/01
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
      浸潤圧縮ベントナイト中でのコロイドの移行挙動を、金コロイドを用いた透水試験法より検討した。本試験では、供した金コロイドの粒径は約 15 nmであり、また、ベントナイトについては乾燥密度 1.0 g/cm3で圧縮した。その結果、実験的に圧縮ベントナイトの金コロイドに対するろ過効果を確認した。
  • 杤山 修, 榊原 哲朗, 井上 泰
    1995 年 1 巻 2 号 p. 187-198
    発行日: 1995/05/01
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
      ポリアクリル酸および市販フミン酸を用いて酸塩基滴定を行い、この結果に基づいて高分子弱酸の解離を表す式 Kapp=[H]α/(1-α)=K1/2{(1-α)/α}([Na]/[Na]s) を導いた。ここで α は解離度、 K1/2 はα=1/2 のときの解離定数、添字 s は高分子表面の濃度を表している。この式は以下の仮定に基づいて導かれた。(i) 高分子は HNRN で表される多塩基酸で各々の酸性基は K1 から KN の解離定数を持つ。(ii) 各解離サイトのプロトンの結合エネルギーは全て等しい。(iii) HN-iRNi- と HN-jRNj- の解離定数の比は、各分子が持っているプロトンの数とプロトン受容サイトの数から統計的に決められ、 Ki/Kj={(N-i+1)/i}/{(N-j+1)/j} で表される。(iv) 高分子表面のプロトンの有効濃度 ([H]s) は [H]s/[H]=[Na]s/[Na] により関係づけられる。[Na]s は [Na]s=[Cl]s+[R]s (ここで[R]s=∑i[HN-iRNi-]) より求めることができ、イオン強度が高いときは [Na]s ⋍ [Cl]s より [Na]s ⋍ [Na] となり、低いときは [Na]s ⋍ [R]sCRα となる。
  • -還元環境に対する微生物の耐性に関する実験-
    吉川 英樹, 福永 栄, 油井 三和, 三原 守弘, 朝野 英一
    1995 年 1 巻 2 号 p. 199-212
    発行日: 1995/05/01
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
      本報告では、光を必要としない細菌である硫酸塩還元菌、硫黄酸化細菌、メタン生成菌に注目し、これら細菌が処分環境に持ち込まれた場合、深部地質環境条件に適応できるか判断する目的で環境因子として pH、Eh をパラメータとした生理活性を実験的に確認し、Eh、pH に関しての耐性領域図の作成を行った。
      処分場での微生物の生息条件のうち深部地質環境への耐性を実験的に検討することを目的として、pH、Eh を自動的に制御可能なファーメンタを制作した。本装置を用いて細菌を接種して増殖の有無を確認することにより実験的手法により耐性領域図の作成が可能となった。
      硫酸塩還元細菌 (SRB)、硫黄酸化細菌 (SOB)、メタン生成細菌 (MPB) について同様にファーメンタを用いて 35℃ (SRB、MPB)、30℃ (SOB) で培養した。その結果、活性を示す Eh 領域は、SRB は Eh=-70~-340 mV の範囲で、pH は最大 8.6 (Eh=-340 mV の時)、Eh は最大-70 mV (pH=7 の時)であった。SOB は pH=7.5 で Eh=+240 mV 以上で pH=8 以上では増殖しなかった。また、MPBは pH=8 で Eh=-210 mV 以下であった。このことから処分環境として考えられるアルカリ、低 Eh の環境で SRB、MPB が生息可能であることが分かった。
  • -微生物の栄養源と透過性について-
    吉川 英樹, 川上 泰, 福永 栄, 岡野 誠司, 藤木 喜市, 本谷 益良, 油井 三和, 朝野 英一
    1995 年 1 巻 2 号 p. 213-230
    発行日: 1995/05/01
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
      処分環境下での微生物の生息を検討する上で欠かせないのが微生物のエネルギー源と炭素源である。そこで本研究では、ベントナイトとアスファルトの両者に関し、これらを微生物がエネルギー源、炭素源とする可能性について検討を行った。ベントナイト中に含有する有機物量を定量するとともに、ベントナイト中での微生物の存在、繁殖を実験的に確認した。また、有機固化体であるアスファルトの分画を試料として生息実験を実施した。最後に、圧縮ベントナイト中での微生物の移行経路について知見を得る目的で、カラムを用いた移行実験を実施した。
      ベントナイト中での有機物量について、月布産ベントナイト (クニゲル V1、クニミネ工業 (株)) を試料とし、乾燥ベントナイト中の全有機炭素量 (TOC) 及びフミン酸、フルボ酸の含有量を測定した。その結果、月布産ベントナイト中の TOC は 0.30~0.35 wt %であることが分かった。また、本測定の OH 腐植抽出液の分析の結果、フミン酸量は 0.5~10 ppm であった。一方、地下水中の微生物の増殖の実験から、ベントナイトを加えた場合 2~3 倍の菌数となった。ストレートアスファルトをシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる分画法で全体を 4 成分に分けた。微生物による易分解成分は、分画した各分画にPseudomonas属の細菌を加え培養したところ、各分画に増殖可能な菌種が確認された。
  • 長尾 誠也
    1995 年 1 巻 2 号 p. 231-242
    発行日: 1995/05/01
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
      本総説では、地層中における TRU 元素の溶存状態、地質媒体への収着性及び移行性を支配する要因の 1 つと考えられている地下水中に存在する高分子の有機物である腐植物質を取り上げ、これまでに報告された地下水中の腐植物質の特徴 (元素組成、官能基含量、分子量分布等) 及び TRU 元素と腐植物質間に形成される錯体の錯生成定数について調べた結果を紹介した。
  • 大井 貴夫, 梅木 博之, 宮原 要
    1995 年 1 巻 2 号 p. 243-252
    発行日: 1995/05/01
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
      緩衝材中を移行する核種の濃度が親核種の崩壊に伴って溶解度を超え、移行途中で沈澱が生じる現象を、その場所での核種の同位体存在比を考えた溶解度の割り当てによる効果を含めて解析した。解析に当たっては、崩壊連鎖に含まれる核種の移行パラメータの影響を考慮した。その結果、沈澱現象や同位体存在比の時間的空間的変化を考慮しない従来の多くの解析モデルは、人工バリアからの核種放出率を高めに与えるという意味で、安全評価上の保守性の観点から受け入れられるものであることが示された。また、これらの効果を含めた、より現実的なモデルによって、システムの安全裕度が大きく高まる可能性があることも確認された。
  • 高瀬 久男, 田村 浩一, 加藤 尚武
    1995 年 1 巻 2 号 p. 253-260
    発行日: 1995/05/01
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
      万一、土壌中に漏洩した放射性金属イオンが土壌に吸着したとき、その土壌を処理しイオンを除去回収する必要がある。このような状態を想定し、微細な土壌粒子 (ベントナイト) からの放射性イオン (コバルト) の除去法として拡散透析法を用いた処理について研究を行った。微細な土壌粒子を含む溶液側を希釈槽、ストリップ液を含む溶液側を濃縮槽とし、両槽の間に陽イオン交換膜を挟み、回分操作による実験を行った。実験ではストリップ液として塩酸水溶液を用いたときが高度分離が達成できた。また、回分操作のシミュレーションを行った結果、ストリップ液の濃度、膜の選択、液と膜の接触状態を示す物質移動係数等がイオンの除去に大きな影響を及ぼすことが分かった。
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