抄録
耐食層にチタン合金, 強度構造に炭素鋼を使用したTRU廃棄体金属容器について長期健全性評価を行った.
C-14の半減期は約5730年であり, その影響を1/1000程度まで低減できる期間である6万年 (半減期の約10倍) を, C-14の閉じ込め期間の目標として設定した. この目標を達成するため, チタンの耐食性能を活用した耐食層の開発を実施してきた.
不働態皮膜の健全性評価については, 想定処分環境における定電位保持試験の結果から温度を変数とする腐食電流密度の実験式を得て, 6万年間の累積腐食量を評価した. すきま腐食については, 想定処分環境における生起条件を調査し, Ti.Gr-17を候補材として選定した. 水素脆化については, 水素化物層成長予測モデルを援用し, 温度・電流密度をパラメータとした定電流試験結果から6万年間における水素化物層厚さを推定した. 破壊臨界厚さ並びにき裂進展モデルを考慮して, この厚さについてはき裂が発生しないことを確認した. 水素脆化については, 加速条件すなわち電流密度の違いによって, 水素化物生成プロセスが異なるという知見が得られており, 自然環境に近い条件での実験結果による, モデルの妥当性の確認が必要である.