高レベル放射性廃棄物の地層処分における長期安全性の評価を行うためには,ニアフィールドで生じるプロセスの定量化が必要となる.そこで,開発された熱-水-応力-化学連成解析モデルを用いて,具体的地質環境条件に基づく地層処分システムを想定した数値解析を実施し,ガラス固化体の放熱と人工バリア内への地下水の浸潤に伴うニアフィールドの化学的な環境の変化を定量的に例示した.海水系地下水環境下での緩衝材中では,一時的に,オーバーパック周辺で塩が析出することや,支保コンクリートとの境界近傍でスメクタイトがカルシウム型化するものの長期的には安全評価上設定されたシナリオと整合する傾向が得られた.さらに,オーバーパックの腐食評価のための基盤情報として,オーバーパックに接触する緩衝材の間隙水組成の変遷を示した.