原子力バックエンド研究
Online ISSN : 2186-7135
Print ISSN : 1884-7579
ISSN-L : 1343-4446
19 巻, 2 号
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研究論文
  • 武田 聖司, 西村 優基, 宗像 雅広, 澤口 拓磨, 木村 英雄
    2012 年 19 巻 2 号 p. 23-38
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
     TRU廃棄物の地層処分の安全評価において,多量のセメント系材料を使用した処分施設から溶出する高アルカリ性地下水がバリア機能へ影響を及ぼす可能性があることがとくに懸念されている.そこで,セメント系材料から溶出する高アルカリ性地下水の母岩への影響を,地下水流動場において地球化学と物質移行の連成解析でシミュレートし,TRU廃棄物の地層処分における高アルカリ性領域の拡がりに,二次鉱物の生成の有無がどのように影響するかを検討した.また,母岩の水理特性の影響の解析も実施した.
     ゼオライトの沈殿に関して,1) 実験での観察により沈殿する可能性がとくに高いと考えられるanalcimeとphillipsite(2種類)のみを考慮した場合や,2) それ以外で沈殿する可能性のある13種類のゼオライト(clinoptilolite(2種類),heulandite,laumontite,mordenite,erionite(2種類),chabazite(2種類),epistilbite,yugawaralite,stilbite,scolecite)も含めた計16種類のゼオライトを考慮した場合では,高アルカリ性領域の拡がりや二次鉱物の沈殿量に関してほぼ同様の結果が得られ,高アルカリ性領域(pH>11)は40 m程度までしか拡がらず,当該領域で0.1Vol.%以上の二次鉱物が沈殿し,いずれのケースでも主にゼオライトとしてはanalcimeとphillipsite,ゼオライト以外としてはsepioliteの沈殿が支配的であった.一方,3) それらのゼオライトの沈殿を考慮しない場合には,二次鉱物の生成量はゼオライトを考慮した場合に比べて少なく,高アルカリ性領域が広範囲に拡がる計算結果となった.このことから,二次鉱物としてゼオライトが生成するか否かが高アルカリ成分の拡がりや二次鉱物の沈殿量に影響することがわかった.また,地下水流速の影響をみるために10倍速い流速を設定した場合では,もとの流速を設定したケースより広範囲に高アルカリ成分が拡がることが示された.これは高アルカリ成分を中和する化学反応が,母岩に含まれる鉱物の溶解反応速度によって制限されているためと考えられた.
  • 鈴木 英明, 中間 茂雄, 藤田 朝雄, 今井 久, 九石 正美
    2012 年 19 巻 2 号 p. 39-50
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
     高レベル放射性廃棄物の地層処分における長期安全性の評価を行うためには,ニアフィールドで生じるプロセスの定量化が必要となる.そこで,開発された熱-水-応力-化学連成解析モデルを用いて,具体的地質環境条件に基づく地層処分システムを想定した数値解析を実施し,ガラス固化体の放熱と人工バリア内への地下水の浸潤に伴うニアフィールドの化学的な環境の変化を定量的に例示した.海水系地下水環境下での緩衝材中では,一時的に,オーバーパック周辺で塩が析出することや,支保コンクリートとの境界近傍でスメクタイトがカルシウム型化するものの長期的には安全評価上設定されたシナリオと整合する傾向が得られた.さらに,オーバーパックの腐食評価のための基盤情報として,オーバーパックに接触する緩衝材の間隙水組成の変遷を示した.
技術報告
  • -文献調査から精密調査段階における地球化学解析手順について-
    岩月 輝希, 水野 崇, 國丸 貴紀, 天野 由記, 松崎 達二, 仙波 毅
    2012 年 19 巻 2 号 p. 51-64
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/28
    ジャーナル フリー
     高レベル放射性廃棄物の地層処分は長期にわたって世代の異なるさまざまな技術者が関わる事業であり,その技術に関わる知見の継承やプロジェクト監理に関わる意思決定過程の追跡性を担保するための情報管理の仕組みが必要となる.筆者らは,地層処分に関わる地下深部の地質環境特性調査の手順,ノウハウ,留意点などの情報管理技術としてウェブ上で情報を利用(保管・閲覧)可能なエキスパートシステムを構築した.本報告では,その概要と,エキスパートシステムに収録した知見の一例として,文献調査から精密調査段階における地球化学解析の手順などについて述べる.
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