抄録
地層処分の安全評価の基礎研究として、べントナイト試料乾燥中におけるべントナイト中の黄鉄鉱の酸化挙動を調べた。黄鉄鉱の定量分析、べントナイト懸濁液のpHならびに硫酸イオン濃度の測定結果から、試料乾燥中において黄鉄鉱の酸化が徐々に進行することを明らかにした。
さらに、べントナイト中の鉄の腐食ならびに腐食生成物の移行挙動に与える黄鉄鉱の酸化の影響を評価するため、乾燥時間の異なるべントナイト試料を用いて鉄の腐食実験を行った。放射化鉄箔試料を用いた実験から得られた平均腐食速度および鉄の腐食生成物の見かけの拡散係数は、乾燥時間の増加に相当増加した。また、1,10-フェナントロリン吸光光度法によって求めた腐食生成物の酸化還元状態から、腐食生成物の移行に寄与しているのは主として2価の鉄であると推定した。ベントナイト中の鉄の腐食ならびに腐食生成物の移行挙動は、黄鉄鉱の酸化に伴うpHの低下の影響を受けているものと考えられる。