1998 年 4 巻 2 号 p. 37-49
わが国においては,高レベル放射性廃棄物は深部岩盤中に処分することが基本方針とされているが,処分の安全性の評価等においては放射性核種の主要な移行媒体となる深部岩盤中の地下水の流動を評価することが重要となる.特に,わが国では,地下数100mから1000m程度までの深地層中に処分することが基本方針とされており,結晶質岩系と堆積岩系が有望な候補岩体と考えられている.このため,割れ目・破砕帯や異方性などを含む複雑な地質構造における水理的特性や地下水流動をいかに適切に把握するかが重要な課題であり,このための調査や解析・評価に関する手法を体系的に確立しておく必要がある.
本稿では,深部岩盤中の地下水流動の評価に関する岩盤透水特性の調査・モデル化手法,岩盤の割れ目等を考慮した地下水流動の解析手法ならびに環境同位体・地下水流向流速測定による地下水流動の調査評価技術などについて,(財)電力中央研究所などにおけるこれまでの開発の現状と適用例について紹介する.