原子力バックエンド研究
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研究論文
フミン酸およびポリアクリル酸による鉄(II)の錯生成
ブディ・セティアワン田中 紘一新堀 雄一杤山 修
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2002 年 9 巻 1 号 p. 21-28

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抄録

 地下水中のフミン物質は, 放射性核種と可溶性コロイド錯体を形成することにより, それらの移行挙動に影響を与えると考えられている.核種とフミン物質の相互作用を理解するためには, 地下水中にもともと含まれている競争イオンによる影響をも評価しておくことが必要である.この目的で, Fe(II)とアルドリッチ社製フミン酸との錯生成をイオン交換法により検討した.フミン酸の組成不均質性と高分子電解質性による影響を分離して評価するために, 組成が均質な高分子弱酸であるポリアクリル酸(分子量90000)についても同様の検討を行い, pH, イオン強度, 金属イオン濃度が錯生成に及ぼす影響を比較した.みかけの錯生成定数をβα = [ML]/([M][R])([M]:遊離Fe2+イオン濃度, [ML]:錯生成しているFe2+イオン濃度, [R]はCRαで, CRはプロトン交換サイトの全濃度でαは解離度である)と定義し, pcH 4.6 から5.5, イオン強度 0.1 および 1.0 M NaCl Fe(II) 濃度 ~10-8 から~10-4 Mの溶液条件でlogβαの値を求めた.ポリアクリル酸錯体およびフミン酸錯体のいずれについてもlogβαは解離度とともに増加しイオン強度とともに減少した(I = 0.1 M NaCl でポリアクリル酸錯体では2.26 (α = 0.32) から2.59 (α = 0.47), フミン酸錯体では, 4.66 (α = 0.58) から4.83 (α = 0.70), I = 1.0 M NaCl でポリアクリル酸錯体では0.53 (α = 0.49) から0.98 (α = 0.71), フミン酸錯体では, 3.31 (α = 0.59) から3.62 (α = 0.71)).logβαのlogαに対する依存性は両者で同程度であり, イオン強度依存性はフミン酸錯体の方がやや小さい.ポリアクリル酸錯体のlogβαはFe(II)濃度の変化によらず一定であるが, フミン酸錯体のlogβαは, フミン酸の組成の不均質性のために, Fe(II)濃度が低くなると著しく上昇した(I = 0.1 M NaCl, α = 0.68で3.21 (CFe = 4×10−4 M) から4.79 (CFe = 6×10−8 M), I = 1.0 M NaCl, α = 0.68で2.35 (CFe = 4×10−4 M) から3.58 (CFe = 6×10−8 M)).

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© 2002 社団法人日本原子力学会 バックエンド部会
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