稲田花崗岩についてBa2+イオンの透過拡散実験を行い、有効拡散係数(De)と分配係数(Kd)を取得した。岩石試料をはさんで2つの溶液槽に同じ濃度の安定BaCl2溶液を満たし、放射性の133Baを用いてBaの自己拡散を観察した。溶液として10-1, 1, 10 mol m-3 BaCl2溶液を用い、25℃においてそれぞれ3ランを行った。10 mol m-3 BaCl2溶液を用いた実験で得られた有効拡散係数は細孔拡散モデルから予想される値と一致していた。これに対して塩化バリウムの濃度が低い場合ほど、分配係数が高く、有効拡散係数も高くなった。バリウムの溶存形態は同じであり、同時に拡散させたI-の挙動から花崗岩試料による間隙構造にも差がないことが明らかになった。それにもかかわらず、有効拡散係数が分配係数に対して正の相関を持っていることは、表面拡散(吸着状態での拡散)の寄与を強く示すものである。