有機農業研究
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【論文】
環境調和型畜産の推進に向けた食品製造副産物としてのクマザサ抽出残渣の飼料利用
中西 良孝岩成 文子髙山 耕二伊村 嘉美
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2019 年 11 巻 1 号 p. 21-31

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抄録

クマザサ抽出残渣(以下,ERDB)の畜産的有効活用を図ることを目的として2つの試験を行い,試験1では,ERDB原物の化学成分,栄養価および反芻家畜による嗜好性を明らかにするとともに,保存性を高めるために米ヌカ類を添加してサイレージ調製した場合の発酵品質,栄養価および嗜好性についても検討した.サイレージ調製については,ERDBのみのERDBサイレージ(以下,ERDBS)区,米ヌカまたは白ヌカを10%添加した米ヌカ区および白ヌカ区の計3区を設定した.試験2では,ヤギに市販ルーサンヘイキューブ(HC)のみを給与した区を対照区とし,HCとERDBS, 米ヌカ添加ERDBSまたは白ヌカ添加ERDBSをそれぞれ乾物重比で8:2に混合したERDBS・HC区,米ヌカ添加ERDBS(以下,米ヌカ・HC)区および白ヌカ添加ERDBS(以下,白ヌカ・HC)区の3区を試験区として計4処理区を設定した.

試験1の結果から,ERDBの粗タンパク質(以下,CP)含量は10.4%,粗脂肪(以下,EE)含量は7.4%と稲ワラのそれらの2倍以上であり,粗繊維含量も45.7%と高く,両飼料間で化学成分に大きな違いが認められたものの,ERDBの可消化養分総量(以下,TDN)は45.5%と稲ワラのそれとほぼ同等であった.しかし,ヤギおよびウシによる嗜好性は稲ワラや輸入乾草に比べてERDBで劣ることが明らかとなった.また,サイレージのフリーク評点はERDBS区と比べて米ヌカ区および白ヌカ区で有意に高く(P<0.05),いずれの区も62点以上と品質は「良」であった.さらに,ヤギおよびウシによるサイレージの嗜好性はERDB区およびERDBS区と比べて米ヌカ区および白ヌカ区で有意に優れた(P<0.05).試験2の結果から,ヤギの代謝体重当たりの乾物,CPおよびTDN摂取量,1日の個体維持行動型割合および粗飼料価指数に有意な区間差は認められなかった.血液性状については,血中総ビリルビン濃度以外,有意な区間差が認められず,すべての項目はほぼ標準範囲内であった.

以上より,ERDBを原物のまま密封保存してもサイレージ化は可能であるが,米ヌカ類を添加することで発酵品質,栄養価および嗜好性がさらに向上することが示された.ただし,米ヌカ類添加ERDBS中のEE含量が7%以上と高かったことから,他の飼料と混合給与する必要があるものと考えられた.また,ヤギにHCの20%(乾物重比)をERDBSまたは米ヌカ類添加ERDBSで代替給与しても,飼料利用性や健康状態がHC単体給与の場合と比べて遜色なかったことから,それらのサイレージは反芻家畜の飼料として利用可能なことが示された.

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© 2019 日本有機農業学会
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