有機農業研究
Online ISSN : 2434-6217
Print ISSN : 1884-5665
11 巻, 1 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
【特集】広島県農業ジーンバンクの歴史に学び未来を拓く
【論文】
  • 中西 良孝, 岩成 文子, 髙山 耕二, 伊村 嘉美
    2019 年11 巻1 号 p. 21-31
    発行日: 2019/07/31
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    クマザサ抽出残渣(以下,ERDB)の畜産的有効活用を図ることを目的として2つの試験を行い,試験1では,ERDB原物の化学成分,栄養価および反芻家畜による嗜好性を明らかにするとともに,保存性を高めるために米ヌカ類を添加してサイレージ調製した場合の発酵品質,栄養価および嗜好性についても検討した.サイレージ調製については,ERDBのみのERDBサイレージ(以下,ERDBS)区,米ヌカまたは白ヌカを10%添加した米ヌカ区および白ヌカ区の計3区を設定した.試験2では,ヤギに市販ルーサンヘイキューブ(HC)のみを給与した区を対照区とし,HCとERDBS, 米ヌカ添加ERDBSまたは白ヌカ添加ERDBSをそれぞれ乾物重比で8:2に混合したERDBS・HC区,米ヌカ添加ERDBS(以下,米ヌカ・HC)区および白ヌカ添加ERDBS(以下,白ヌカ・HC)区の3区を試験区として計4処理区を設定した.

    試験1の結果から,ERDBの粗タンパク質(以下,CP)含量は10.4%,粗脂肪(以下,EE)含量は7.4%と稲ワラのそれらの2倍以上であり,粗繊維含量も45.7%と高く,両飼料間で化学成分に大きな違いが認められたものの,ERDBの可消化養分総量(以下,TDN)は45.5%と稲ワラのそれとほぼ同等であった.しかし,ヤギおよびウシによる嗜好性は稲ワラや輸入乾草に比べてERDBで劣ることが明らかとなった.また,サイレージのフリーク評点はERDBS区と比べて米ヌカ区および白ヌカ区で有意に高く(P<0.05),いずれの区も62点以上と品質は「良」であった.さらに,ヤギおよびウシによるサイレージの嗜好性はERDB区およびERDBS区と比べて米ヌカ区および白ヌカ区で有意に優れた(P<0.05).試験2の結果から,ヤギの代謝体重当たりの乾物,CPおよびTDN摂取量,1日の個体維持行動型割合および粗飼料価指数に有意な区間差は認められなかった.血液性状については,血中総ビリルビン濃度以外,有意な区間差が認められず,すべての項目はほぼ標準範囲内であった.

    以上より,ERDBを原物のまま密封保存してもサイレージ化は可能であるが,米ヌカ類を添加することで発酵品質,栄養価および嗜好性がさらに向上することが示された.ただし,米ヌカ類添加ERDBS中のEE含量が7%以上と高かったことから,他の飼料と混合給与する必要があるものと考えられた.また,ヤギにHCの20%(乾物重比)をERDBSまたは米ヌカ類添加ERDBSで代替給与しても,飼料利用性や健康状態がHC単体給与の場合と比べて遜色なかったことから,それらのサイレージは反芻家畜の飼料として利用可能なことが示された.

【技術論文】
  • 稲垣 栄洋, 長谷川 佳菜, 窪田 早希子, 西川 浩二, 成瀬 和子
    2019 年11 巻1 号 p. 32-37
    発行日: 2019/07/31
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    伝統的な刈敷き栽培は,ススキやヨシなどのイネ科植物を用いるのが一般的である.しかしながら,徳島県剣山系の伝統農法では一般的な刈敷き栽培にはススキを用いるのに対して,ナス科作物の栽培にはタデ科多年生雑草であるイタドリが経験的に用いられている.この要因は明確ではない.そこで本研究では,イタドリの表層施用がナスの生育や収量,品質に及ぼす影響を検討した.

    試験は2016年度と2017年度に行い,径30cmのポットにナスを1本植え栽培して,イタドリ施用,ススキ施用,無施用の3水準で行った.その結果,潅水を制限した場合,イタドリを施用した区とススキを施用した区では,無施用に比べて土壌水分が高くなった.また,イタドリ施用区とススキ施用区では昼夜の温度差が小さくなる効果が認められた.ナスの生育や収量には,イタドリやススキの施用の効果は認められなかった.一方,イタドリを施用した区では,ナスの皮がやわらかくなり,果実糖度が高まる効果が認められた.

【書評】
feedback
Top