本研究では,薩摩黒鴨TMのアイガモ農法での利用に向けた基礎的知見を得ることを目的とし,水田放飼した際の行動や産肉性について検討を行った.1週齢の薩摩黒鴨TMを水田放飼せず,0.2 aの休耕地で屋外飼育した対照区(10羽:♂5, ♀5)と4 aの水田(品種:ニコマル)で飼育した水田放飼区(8羽:♂4, ♀4)に区分し,市販成鶏用配合飼料(ME 2,800kcal/kg, CP 15%)を不断給餌しながら,9週齢まで放し飼いした.その後,各区とも同一条件下で舎飼いし,15週齢で屠畜した.2および4週齢の行動では,採食(草や昆虫)や移動が対照区に比べて水田放飼区で有意に多く(P<0.05),水田内では顕著な除草・駆虫効果が認められた.9週齢における水田放飼区の体重は2,855gと対照区の2,513gに比べて有意に大きかった(P<0.05)ものの,15週齢時の両区の体重に有意差はなく,飼料要求率についても対照区で6.8,水田放飼区で7.2を示した.ムネ肉の皮下脂肪色については,水田放飼区のb*値が対照区のそれよりも有意に高い値を示した(P<0.05)ものの,解体成績には両区間で差がみられなかった.以上のように,水田放飼した薩摩黒鴨TMは,活発に行動し,顕著な除草・駆虫効果を示すとともに,その産肉性については休耕地で屋外飼育したものに比べても遜色ないことが示され,アイガモ農法で利用可能であることが明らかになった.