有機農業研究
Online ISSN : 2434-6217
Print ISSN : 1884-5665
11 巻, 2 号
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【巻頭言】
【技術論文】
  • 髙山 耕二, 園田 大地, 平野 里佳, 中村 南美子, 大島 一郎, 中西 良孝
    2019 年 11 巻 2 号 p. 5-9
    発行日: 2019/11/29
    公開日: 2020/08/29
    ジャーナル フリー

    本研究では,薩摩黒鴨TMのアイガモ農法での利用に向けた基礎的知見を得ることを目的とし,水田放飼した際の行動や産肉性について検討を行った.1週齢の薩摩黒鴨TMを水田放飼せず,0.2 aの休耕地で屋外飼育した対照区(10羽:♂5, ♀5)と4 aの水田(品種:ニコマル)で飼育した水田放飼区(8羽:♂4, ♀4)に区分し,市販成鶏用配合飼料(ME 2,800kcal/kg, CP 15%)を不断給餌しながら,9週齢まで放し飼いした.その後,各区とも同一条件下で舎飼いし,15週齢で屠畜した.2および4週齢の行動では,採食(草や昆虫)や移動が対照区に比べて水田放飼区で有意に多く(P<0.05),水田内では顕著な除草・駆虫効果が認められた.9週齢における水田放飼区の体重は2,855gと対照区の2,513gに比べて有意に大きかった(P<0.05)ものの,15週齢時の両区の体重に有意差はなく,飼料要求率についても対照区で6.8,水田放飼区で7.2を示した.ムネ肉の皮下脂肪色については,水田放飼区のb*値が対照区のそれよりも有意に高い値を示した(P<0.05)ものの,解体成績には両区間で差がみられなかった.以上のように,水田放飼した薩摩黒鴨TMは,活発に行動し,顕著な除草・駆虫効果を示すとともに,その産肉性については休耕地で屋外飼育したものに比べても遜色ないことが示され,アイガモ農法で利用可能であることが明らかになった.

  • 古川 勇一郎, 後藤 章
    2019 年 11 巻 2 号 p. 10-19
    発行日: 2019/11/29
    公開日: 2020/08/29
    ジャーナル フリー

    水稲の育苗では,パイプハウスや被覆資材を利用して温度や日射量を適切に管理する必要があるが,育苗規模や育苗時期の拡大に伴って,これまでよりも幅広い温度条件での育苗管理が求められるようになってきた.また化学合成農薬に依存しない有機栽培の育苗では,より厳格な温度管理が必要になる.特に晴天高温となった場合には,苗焼けなどの高温障害のリスクを伴う.本研究では,晴天高温時にも高い昇温抑制効果を有する高温対策被覆資材を開発すると共に,その使用方法を検討した.新被覆資材(トーカンほなみ/東罐興産)は,従来の被覆資材(シルバーラブ#80)に比べて5°C以上の昇温抑制効果を備え,高温障害の発生を抑止できることを確認した.曇天低温が続く場合には温度が上がらずに生育遅延が顕著となったが,シルバーポリトウ#80を上掛けすることで生育遅延は解消できた.新被覆資材を用いることで育苗におけるリスク管理を簡便化することができ,露地プール育苗と併せて,有機栽培用の育苗にも応用可能であることが確認された.

  • 中川 祥治, 井川 幸一, 阿部 真久, 清水 幸一
    2019 年 11 巻 2 号 p. 20-28
    発行日: 2019/11/29
    公開日: 2020/08/29
    ジャーナル フリー

    北海道内70か所の農家が管理する有機栽培露地畑を対象として,収量水準と土壌化学性との関係から土壌診断のための基準値の試案を作成した.周辺の慣行栽培畑を目安として個々の農家に収量水準を判断してもらうと,「少ない」が32圃場,「普通」が36圃場および「多い」が2圃場となった.「多い」が少なかったので,比較する収量水準群を少収量群(n=32)と普通+多収量群(n=38)の2つにした.土壌化学性はpH(H2O),EC, 全C, 全N, C/N比,交換性CaO, 交換性MgO, 交換性K2O, Ca/Mg比,Mg/K比,CEC, 塩基飽和度,NH4-N, NO3-N, 可給態N, 熱水抽出性N, 可給態P2O5, P2O5吸収係数,ClおよびSO4-Sを測定あるいは算出した.それら化学性について統計的に2群間の比較をしたところ,普通+多収量群は少収量群よりもNO3-N(P=0.006),SO4-S(P=0.038),熱水抽出性N(P=0.074)およびC/N比(P=0.082)の値が高く,塩基飽和度(P=0.013),pH(H2O)(P=0.016)およびMg/K比(P=0.076)の値が低かった.これら7項目の土壌化学性のうち5項目は4種類の肥料の施用有無との関係がみられたが,それら肥料の施用有無と収量水準との関係はあまり明確ではなかった.土壌診断のための基準値の試案として,各土壌化学性における普通+多収量群の第1四分位および第3四分位をそれぞれ下限および上限とすることを提案した.土壌診断では2群間に差がみられた7項目を重視すべきであるが,毎年の測定は,簡易に測定できるNO3-NとpH(H2O)で良いと考えられる.

【書評】
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